2026年11月05日
9月2日、東京・大手町のTOKYO TORCH 常盤橋タワーで、「秋のごちそうフェア 国産ジビエ調理セミナー」を開催し、お集まりいただいた大丸有の料理人30名みなさまに、国産ジビエの魅力と調理法をお伝えしました。
本イベントは、大丸有(大手町、丸の内、有楽町)エリアでの国産ジビエの食文化の定着を目的に開催されたもの。国産ジビエ認証機構(以下、当機構)および国産ジビエ認証施設部会(通称:ジビエコミッティ、22施設が加盟)によるコンソーシアムが企画、運営しています。
料理人向けのセミナーを皮切りに、国産ジビエフェア、ストリートフェス「大手町マーケット」でのジビエ出店、商品開発に向けたリサーチ、料理人による現地視察までを含む盛りだくさんの取り組みです。
大丸有は「Act 5」など社会的な貢献を具体的に行うプロジェクトが継続中であり、エシカルなエリアマネジメントに取り組んでいます。その流れにジビエがフィットすることから数年来大丸有でのジビエ活動が続いており、今回は、より長期的に今後もジビエをご利用いただけることを目指した事業設計になっています。

今回の講演でご担当いただいたのは、国産ジビエ認証施設部会のメンバーの4名です。
株式会社tracks(福岡県糸島市)の相内氏は、「飲食店にとって、国産ジビエを使う意味とは」と題し、国産ジビエを「使う価値」をどう見出すべきかという方向性を示しました。
全国の個人経営飲食店200店舗を対象とした調査によると、ジビエを使う店舗は200店舗中60店舗に留まります。相内氏は、飲食店がジビエを使わない理由を「価格」「仕入れ・品質への不安」「技術的なハードル」「店との相性」の4点に整理し、「自分も飲食店を20年やっているから、その問題はよく分かる」としつつも、逆に使う店舗が、単に珍しい食材として国産ジビエを使っているのではないところに、ジビエの特徴があると説明しています。
「ジビエは地域ごと、季節ごとに当然味が違うお肉ですが、それが料理人の方が表現したいものに合う、ジビエならそれを表現できるという、表現性への魅力があります。つまり単に珍しい食材ということではなく、その店舗にとって、国産ジビエを使う価値があると考えて使われているのが現状だと思います」
そのうえで、tracksが「有害鳥獣駆除で獲れたから食べる」のではなく、「食べたいと思ってもらえるジビエにする」ことを目指して、丁寧な確認と処理をしていることを紹介し、「今回のセミナーを通じて『ジビエを使わない』という壁を超えるヒントを見つけてほしい」と呼びかけました。

続く実演パートではオーガニックブリッジ(千葉県木更津市。株式会社KURKKU FIELDS内)の岡田氏解体と調理を行いました。
解体はイノシシの半身から部位に分けるプロセスを実演。「8番目の骨にナイフを入れる」など、具体的な情報を示しながら解説し、切り分けた部位ひとつひとつについても、どんな特性があり、どんな調理法が向くかといった解説を加えていました。
調理は「イノシシ背ロースのパイ包み焼き」と「イノシシとゴーヤのクレピーヌ」の解説をしています。ミンサーやスタンドミキサー(「パワーのあるものを使わないと肉が潰れてしまう」)を使った肉の扱い方、塩の量、合わせる野菜による水分量の違い、合わせるべき香辛料の例など、かなり詳細な解説で、参加者の皆さんも興味津々の様子でした。質疑応答でも「ウデの肉を使う場合は、スネと同様で良いのか?」といったかなり詳細な質問が出されており、料理人同士の会話といった感じでした。
また、岡田さんは併設施設で栽培するさまざまな野菜を利用しており、それがジビエの魅力を引き出しており、売上につながっていることを紹介しています。
「年間を通じていろんな野菜で、例えばゴボウだったりとか、新ショウガだったりとか、同じメニューでもそうやって合わせる野菜を変えていくだけで、購入する動機につながっています。あとは、その野菜に合いそうな香辛料に入れ替えていくのもいろいろなバリエーションはお店に出せるようになります。お店によって特徴が出せるでしょうし、お客さまに楽しんでいただけるのではないでしょうか」
Mt.(北海道・美唄市)の山本氏は、施設に続いて、自社のジビエを使った料理を提供するビストロ「モンターニュ」を今春オープン。料理の美味しさはもちろん、山本氏キャラクターとトークによって、オープン間もないながらも人気店となっています。この日のプレゼンでは、実際にどのようなメニューでどのような提供の仕方をしているのか、トークの仕方も含めて解説しました。
Mt.は「撃つ瞬間から調理が始まる」をコンセプトにしており、動物たちの生命はハンターが撃ったときに終わるのではなく、「お皿のうえで終わる」と考えているのだそう。そして、それを「お客さまが味を想像できる言葉、文字で伝えることが大事」だとし、お店ではこうやって提供するのだと、朗々と歌い上げるようにトークの実演をしてみせました。
「こちらエゾシカ肉のロティでございます。内モモを使用しています。内モモはモモの中でも非常に柔らかい部分なのが特徴です。そして私たちはハンターとして、食肉処理場の経営者として、料理人として伝えなければならないことがあります。獲物の命は私たちハンターが撃ってから終わるものではありません。最後の舞台、お皿の上で獲物の命は終わるものだと思っています。皿の上は最高の舞台でなければなりません。お皿の上で獲物の命の灯火を感じていただきながらお召し上がりくださいませ」――
また、山本氏は5000円ものメイン料理だけだとお客さまが頼みにくいとし「小さな」メニューを用意することも大事だと指摘しています。
こうやって見ると、岡田、山本両氏の内容は、どちらも相内氏が指摘した「使う価値」につながっていることがよく分かるでしょう。
最後は部会長を務める福岡氏が、国産ジビエ認証施設部会取り組みを紹介して締めくくりました。
福岡氏は国産ジビエ認証施設部会の役割が施設間の連携、情報共有と技術交流、料理人を含むtoBへの情報発信などであるとし、次のような活動を行っていると紹介しました。
1つ目が「国産ジビエ認証の地位の向上」です。国産ジビエ認証を知っている人はまだ少ないのが現実ですが、こうした活動で、しっかり安心安全なジビエをお客さんが食べることができる社会の実現を目指します。
2つ目はしっかり現場の声を届ける「政策提言」。「捕獲従事者の課題、生産する処理施設の課題、あるいは料理人など、さまざまな段階の人々の意見をこの団体で組み上げて、しっかりと法律、政策につなげていく活動をしていきたい」と福岡氏。
3つ目は、「美味しいから”未来へ繋いでいきたい」ということ。福岡氏自身、郷里の山地の荒廃を見て、里山地域の研究から最大の課題である鳥獣被害の解決に長年取り組み、ジビエの世界に入った経緯があります。「やはり猟師さんが前面に立って頑張っている現状があり、それをぜひ料理人の皆さんに見ていただいて、どんな獲物が獲れているのか、どういった気持ちで捕獲しているのか、というものを見ていただきたいと思います」と福岡氏は述べています。
参加者のひとりは、特に解体、調理の実践パートが「勉強になった」ものの、「和食なので、鍋くらいしか今のところ思いつかない。どんなメニューができるか、これからしっかり考えたい」と話していました。また、別の参加者は「認証を知って、安心して使えるものがあるということが分かったのは良かった。珍しさではなく美味しさで食べてもらえる料理を出したいと思う」と話しています。
参加者の皆さんいずれも、解体・調理パートが勉強になったとし、また、料理を提供する際に情報を伝えることの大切さについても考えさせられていたようです。
大丸有全体でジビエに取り組めているのはエシカルなエリアマネジメントに取り組んでいるためです。地域の魅力を向上させつつ、社会的価値の高い、エシカルなエリアにするためにさまざまな取り組みをしています。そうした活動を担当する同社の井上成氏は、ジビエとエリアマネジメントについて次のように述べています。
「ジビエにはさまざまな伸び代があると感じており、各店舗にとってもジビエの採用はメリットになると考えています。各店舗でケイパビリティを高めるサービスにつながればと思うし、今後ジビエがエリアの具体的なブランドのひとつになることにも期待しています」
また、こうしたジビエの活動が定着するようなら、今後フォーマット化し、他のエリアにも応用していくことも視野に入れていると話しています。
大丸有エリアの「秋のごちそうフェア~ジビエを丸の内で~」は10月14日~11月8日の期間、23店舗で開催されています。